2021/05/18 07:32




ベルリンでは東西分断を経た古い建築物がさまざまな形で利用されている。それらは、行くたびに別のイベントスペースへと姿を変える。古い建物は基本的には保存されるとはいえ、中には取り壊されるものもあって、この写真集中の東ドイツの共和国宮殿(Palast der Republik)も今は無い。取り壊しのニュースを聞いた時はショックだった。ベルリン大聖堂や旧博物館(Altes Museum)の向かい側に位置し、とにかく異様な建物だった。その異様さを、ベルリン建築といえばの大御所カール・フリードリヒ・シンケル設計の旧博物館前の芝生に座って眺めるのは、かなり面白かった。

 

このベルリン建築写真集に初めて出会ったのは、15年ほども前のベルリンに留学したときだ。当時出版したてで友人に教えてもらって感動し、ハッケッシャーマルクト近くの新刊本屋に買いに走ったことを記憶している。留学先だったベルリン自由大学では、ちょうど同じようなテーマのゼミ(演習)が開講。当時人気のテーマだったのか(ようやく「東」を客観的に捉えられるようになった時代だったのかもしれない)。私は参加したかったけれど選考に落ち、それでも聴講だけ出来ませんかと先生に頼みに行ったら「あなたしつこいわね」と断られた。実際の建築物を見て回りながらのゼミということもあり、人数制限に厳しかったのだ。粘れば粘るほど大抵はうまく物事が運ぶドイツで、唯一自分の願いが通らなかった苦い思い出かも。




そんな15年ほど前も現在も、ベルリンのイベントスペースで活気があるのはいつも旧東側のようだ。私の感じてきたところでは、西側での開催だと主催者も人集めに苦労しているような。すっかりメジャーとなっている東側の箱(ベルクハインとか)も山のようにあり。週末の活気は楽しいけれども、行ってみて密になっているともう心底うんざりする。どこでもそうだが、マイナーで居心地の良い場所を探すのは一苦労だ。


コロナ禍の前に行った時は、昔だとあり得なかった東と西の境目の北の方の地区が流行の場所となって活気が出ており、そこで友人たちと少しお酒を飲んだ時間が楽しかった。場所は変われどずっと変わらないベルリン特有の雰囲気が満ちていたなと、思い出すたびに嬉しくなる。数年前に行ったリンディホップダンス(スウィングダンス)のパーティー場所も良かった。その建物自体は19世紀末か20世紀初頭のものだったと思うが、向かい側はたしか旧東ドイツのスポーツ施設だった。最近は、いつも湖畔のコンサートスペースのパーティーに連れて行ってもらう。そこも廃墟っぽさを残したまま上手く運営されていた。(コロナでどうなったかな・・・そもそもコロナ以前から、最近はイベントをやる良い場所が少ないとは友人たちの口癖だったけれど。)私も若い時と違ってもうまかせっきりで、場所を覚えもしないし自分で探しもしなくなって数年。年取ったな、でも最近仕事も以前より大分ましになったし(相変わらず要領悪いとはいえ)、そろそろ若い時のようにもうちょっと自分で探そうかな、自分ひとりの力で見つけた場所でかけがえのない友人に知り合ったのだから、、、とにかくまた早くベルリンに行きたいな、と思う今日この頃です。