2022/01/09 00:48

ドイツ語の『ピーター・パン』を入荷しました。



ピーターとウェンディたちの冒険譚とは別の、『ケンジントン公園のピーター・パン』のドイツ語訳の初版本で、1911年にワイマールのキーペンハウアー出版社から刊行された緑色の布装本です。


イギリスの初版と同様、アーサー・ラッカムの挿絵入り、表紙には金押しのピーターがパンの笛を吹いている姿。じつに愛くるしいです。またフォントは、ドイツ特有の亀の子文字で力強く組まれています。




上の写真の金押し飾り(エンボス)はドイツ版に特有のものではなく、どうやら、1910年にロンドンで出版された後版(初版は1906年)にならったもののようです。ただし、背に刻まれたタイトルの書体はドイツ風です。英国の版には、踊るようなアルファベットで全タイトルと著者名と挿絵画家名、一番下には出版社名までも記されているのに対し、このドイツ語初版では「Peter Pan」とのみで簡潔なデザインです。

さらに、英語タイトル直訳だと「ケンジントン公園のピーター・パン」(Peter Pan in Kensington Gardens)ですが、ドイツ語訳者フンケは、ドイツ語圏の読者のためより普遍的にPeter Pan im Waldpark=「森林公園のピーター・パン」としている点も面白く思いました。



今日は珍しく晴れたものの、ますます冷え込む毎日。暗い灰色を基調としたラッカム挿し絵に北陸の冬空が重なって見えるとともに、かつて訪れたケンジントン公園の春の景色が思い出されました。