2022/02/20 23:29

3年前の昨日亡くなったファッションデザイナーのカール・ラガーフェルトは、本好きとして知られていました。稀少本コレクションの売りたてが盛大に行われたと噂を聞いたのは2017年ごろのことです。彼はドイツ人でハンブルクの出身です。


最近、彼の別荘を紹介する以下の動画を見て、とても興味深く思いました。


https://www.youtube.com/watch?v=HXHrxTKvXiU


ブルーノ・パウルのソファを「表現主義的青」のファブリックに張り替え、『ドクトル・マブセ』などの無声映画が好きだったとのこと、壁には『カリガリ博士』のポスター、またハティエ・カンツ社刊行の表現主義展の図録が飾られています。ちなみに下の写真は、その図録のダルムシュタットの展覧会場です。




(2011年3月撮影)


とにかく、彼の空間に、私が日々親しみを覚えているアヴァンギャルド時代のドイツ芸術が溢れていて、見入ってしまいました。





が、驚いたのは、さらにその先です。


彼が最も大切にしていた場所として、子供時代の部屋を再現した部屋が紹介されるのですが、そこに「カールの原点」としてメンツェルの複製画が掛けられているのです。10歳のクリスマスに母親に買ってもらった絵画だとのこと。オリジナルを買えなかった両親への怒りの記憶とともに、生涯そこに飾っていたとのことです。



アドルフ・フォン・メンツェルは1815年にプロイセンに生まれ、19世紀欧州の画壇で活躍しました。フリードリヒ大王を描いた作品で有名です。とりわけよく知られているのは、ポツダムのサンスーシ宮殿でフルートを吹いているフリードリヒ大王の作品でしょうか。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adolph_Menzel_-_Flötenkonzert_Friedrichs_des_Großen_in_Sanssouci_-_Google_Art_Project.jpg


以下は、アヴァンギャルド時代のドイツで刊行された、メンツェル素描作品集です。とても状態が良くないものですが、私は好きな本です。カール・ラガーフェルトが複製画を一番大事な部屋に飾っていたことに力を得て、このたびおすすめしたいと思いました。