2022/03/13 21:39



『春の目ざめ』は、ドイツの作家フランク・ヴェーデキント(1864-1918)の戯曲です。大正初期の翻訳本が入荷しました。



春の目ざめ 少年悲劇 フランク・ヴェデキント(ヴェーデキント) 野上臼川(豊一郎)訳 東亜堂書房、1913(大正3)年 初版 初訳 125x186mm, 3, 2, 1-2, (4), 3-280, (4), 74頁に、ヴェーデキントの写真3枚。版元厚紙装、函欠、表紙にやや大きな(15mmほど)のシミあり、裏表紙に一部擦れ、背やけ、小口チャバミ、経年変化、扉絵にヴェーデキントの肖像写真(「この訳書の為めに贈り来れる最近の写真」)、冒頭に「原作者より役者への書簡」のファクシミリ3ページにわたってあり。本文の紙は横に線の入った上質なもの(レイドペーパー)が使用されています。『明治大正昭和翻訳文学目録』(国会図書館編、1972年)に記載なし。



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1891年に刊行されたものの、舞台での上映が禁止となっていたこの作品は、1906年、ベルリンでマックス・ラインハルトの演出により上演されました。この上演の実現には、ウィーンの作家ヘルマン・バールも深くかかわっていたということが、バールの日記から明らかとなりました。この翻訳書はその7年後に刊行されたものということになります。



1891年スイスで刊行された初版本では、ミュンヘン世紀末芸術の立役者フランツ・フォン・シュトゥックが表紙をてがけました。なだらかな山を遠景に、野原に桜草(プリムラ)や雛菊、一輪草(アネモネ原種)が咲いています。ツバメが二羽描かれていますが、一羽は芽吹いた木に留まり、一羽は宙を飛んでいます。シュトゥックの絵画に典型的である退廃的なムードは極力押さえられています。とはいえ、この戯曲の深い芸術表現と相まって非常に高い効果を生んでいます・・・と話が翻訳本から逸れてしまいましたが・・・


シュトゥックといえば、ミュンヘンには、彼の邸宅(Villa Stuck)が残されています。現在は、現代アートのギャラリーともなっている場所ですが、現存するアトリエや音楽サロンなども見学でき、大好きなところです。

https://www.villastuck.de





そんなことも思い出しながら・・・

以下は、『春の目ざめ』のレクラム文庫と岩波文庫(同じ野上豊一郎訳の昭和初期のもの)です。