2023/02/15 19:32


もう少しオペラについて書かせていただきます...


待ち望んでいたオペラ座展の図録が届きまして、
とても楽しく拝見しております。

今回の展覧会で私個人的に最も嬉しかったのは、
19世紀末パリにおけるリヒャルト・ワーグナー受容のテーマが取り上げられたことです。

ボードレールがワーグナーオペラに夢中であったこと、
「トリスタンとイゾルデ」などに典型的な、曲線のようななだらかな音楽に影響を受けて
「アール・ヌーヴォー」の造形が誕生したとの説もあること…..
こうした話を、学生時代、故竹内次男先生の建築史の講義で初めて聞きました。目が開かれる思いで、
それ以後、私の中では、「パリとワーグナー」という組み合わせがずっと頭の端にありました。

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関連して、この展覧会でとても嬉しかったのは、
ルノワールによるワーグナー肖像画とタンホイザーの絵画が見られたことです。


前者は、一言で申して大変気持ちの悪いものでした。
気持ちの悪いということは、前衛的であるということで、当時の欧州芸術には不可欠な要素ですから、
とても嬉しくなりました。
私はそもそもはルノワールのことがずっと嫌いでした。
しかし、ルノワールのような、長らく重要とみなされてきた画家を簡単に嫌いと言ってしまっては、他所様の文化に敬意が持てていないことにもなるので、困っていたんです。

今回のオペラ座展拝見したおかげで、
これからは、ルノワールから逃げずにすみそうです。



最後にもう一点、この度展示されておりました、
ルノワールのタンホイザーの絵画につきまして。

(展覧会図録『パリ・オペラ座〜響き合う芸術の殿堂』2022年、228-229頁より)


一昨日、1978年のバイロイト音楽祭のタンホイザーを見ておりましたら、
(この演出では冒頭のバレエのシーンにかなり力が入っているように思えます、たしかパリのバレエ団だった気がするのですが…)




冒頭のヴィーナスと主人公の配置がルノワールが描いた絵画とまったく同じで、感動しました。
とても伝統的なシーンなのですね。37分37秒あたりです。


ついでに、最近見たいと思っていた、ナタリー・シュトゥッツマン指揮のタンホイザーも見つけまして↓↓↓、比較しようと少し見てみましたが、ルノワール絵画の引用的な感じはありませんでした。またバレエのシーンもなく...パリ版とありますが…パリ版にはバレエのシーンがあると勘違いしておりました、まだまだ勉強不足です。

今後、他の演出もいろいろと見比べてみたく思いました。