2023/07/31 09:54


「前世紀の前半に訪れた子供の本の最盛期は、具体的な(そして多くの点で今日のそれを凌ぐ)教育上の認識から生じたというよりも、かの時代の一要素として、この生活そのものから生じたのである。一言でいうならばビーダーマイヤー のなかから。ほんの小さな村にも出版社があり、その出版物は誰にもよく知られていて、当時のつつましやかな実用家具にも似て愛らしいものだった。そしてこうした家具の引き出しのなかに、これらの本は百年ものあいだ眠っていたりするのである。したがって子供の本も、ベルリンやライプチッヒ、ニュルンベルクやヴィーンのものばかりではない。蒐集家の心にとっては、むしろマイセン、グリマ、ゴータ、ビルナ、プラウエン、マグデブルク、ノイハルデンスレーベンといった名前の響きのほうが、刊行地としてははるかに大きな期待をかき立てるのだ。こうした町のほとんどすべてで挿し絵画家が仕事をしていたのであって、ただその大半は名前が残っていないだけである。...」43頁


このような記述を読むと、ベンヤミンがいかに古書、古本、蒐集の世界の真ん中にいたのかを改めて実感する次第です。

そもそも私は学生時代、ベンヤミンのテクストをとりまく観念くささが苦手でした。(今思うに、単に自分の勉強不足です。)今彼のテクストを読むと、彼が物好きだったことを感じ、嬉しく読めるようになってきました。


生きている時代も場所も違いすぎるので、そもそも感情移入のようなことは軽くしたくないのですが、
ベンヤミンと同じく、私もビーダーマイヤー期の本が大好きなんです。
実は蒐集しています、と言いたいのですが、実物触りたさに商っています、というのが現実です。
ビーダーマイヤー 期の絵本は本当に愛らしく、欧米では蒐集家たちがオークションで熱心に競争する世界です。
その一端を覗くことが出来るといつも幸せを感じます。

ベンヤミンも100年以上前の同じ世界にいたのだなというようなことを、
上記のようなテクストから勝手に感じています。



ビーダーマイヤー期の絵本。上の写真のもの...なかなかデータどり難しく手間取っているものですが、近々掲載しようと思います。