2024/02/09 20:20

古典を学ぶ人必携のロエブ叢書が何冊も入荷しているため、早くデータをと焦りながら何日もが過ぎ去っていましたが、先日ヘロドトスの『ペルシャ戦争』とディオゲネス・ラエルティウスの『ギリシャ哲学者列伝』などほんの数冊だけ掲載しました。早速アリストテレスの『問題集』が旅立ち、喜んでいます。あちらもこちらも、やらなければならないことが多すぎますが、動き続けるのは大事かなと思って私なりにがんばっているつもりです。


あれこれやっているうちに、水上瀧太郎全集の端本に行き当たりました。揃いではなく、ざっくり言い切ってしまえば商品価値が低いこれらの本は、実は私としてはどうしても諦められず困っているものです。ページを繰れば必ず面白いところに当たって、これは戦前日本の西洋文化受容研究の第一級資料としてかなり素晴らしいものに違いないと、商品としたいのか自分が読みたいのか分からない状態に陥り、結局仮置きの山に戻っていくを繰り返しているものですが、今日もそうなりました。

今日驚いたのは、「伊太利亜の女優」という文章です。
「エレクトラ」をボストンで観劇した体験が記されていました。

実は、数日前、週に一度翻刻プロジェクトのお手伝いにうかがっております西田幾多郎記念哲学館で、西田の集書メモ帳にも「Elektra」と見つけたところです。
こちらには作者は記してありませんでしたが、おそらく戦前日本で人気だったホフマンスタール の本のことであろうと考えていました。ここに水上瀧太郎の文章に出会い、やはりそうなのではないかという思いを強くするばかりです。

かつて人気のあったものも今はそれほどでもなかったり、「マスト」であったものも今はそれほどでもなかったり、土地(場所)が変わればそれほどでもなかったり、

ドイツ文学を学んだ私にとって大学でのホフマンスタール は『チャンドス卿の手紙』で、でもそれ以前に幼い頃偶然見てしまったオペラが実は『エレクトラ』(恐ろしい演出でトラウマのような)と『薔薇の騎士』、しかしこれらの体験はちっとも融和せず...いよいよ人生も半ば以上なので、もっと楽しみたいと願います!(とはいえ、あれこれでなかなか時間が取れませんが、作品の名前や本の背表紙もかなりの幸福を人に与えてくれるものです、頭を働かせ満足して生きていきたいものです。)

写真は、暁烏敏の『内省せられたる自己』です。


ページを繰ると、数々の西洋の作家や哲学者の名前が散見され、驚かされました。当時の知識人たちが持っていた、幅広いおおらかな読書体験が生き生きと現れているように思いました。






*ホフマンスタールの『エジプトのヘレナ』インゼル書店初版限定版背ベラム装(1928年)を入荷しております*